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今回は, 巡回置換、互換、部分群について述べる.

まず巡回置換についてみてみよう.

定義1 巡回置換 
n\geq 2とする. n文字の置換\sigmar個の文字をi_1\rightarrow i_2\rightarrow i_3\rightarrow \cdots \rightarrow i_r\rightarrow i_1のように移し、他は動かさないとする.

このとき, \sigmaを長さrの巡回置換という.

\sigma=(i_1\ i_2\ i_3\ \cdots\ i_r)と表す.

そして, 長さ2の巡回置換(i\ j)を互換という.

(i_1\ i_2\ \cdots\ i_r)^{-1}=(i_r\ i_{r-1}\ \cdots i_1)であり, (i\ j)^{-1}=(i\ j)である.

例2 (1\ 2\ 3)= \left( \begin{array}{cccccc} 1 & 2 & 3 & 4 & \cdots & n \\ 2 & 3 & 1 & 4 & \cdots & n \\ \end{array} \right).

例3 (i\ j)= \left( \begin{array}{ccccc} \cdots & i & \cdots & j & \cdots \\ \cdots & j & \cdots & i & \cdots \\ \end{array} \right).

ただし, \cdotsで省略しているところは上下とも同じ文字が並んでいる.

補題4 \sigma, \tauを互いに同じ文字を含まない巡回置換とするとき, \sigma\tau=\tau\sigmaとなる.

例5 長さ3の巡回置換の二つの積は次のとおりである.

(a\ b\ c)(a\ b\ d)=(a\ c)(b\ d), (a\ b\ c)(a\ d\ b)=(a\ d\ c), (a\ b\ c)(a\ d\ e)=(a\ d\ e\ b\ c), (a\ b\ c)(d\ e\ f).

ただし, a,b,c,d,e,fはすべて異なるとする.

例6 巡回置換は互換の積として表されるが, 表し方は一意ではない.

例えば, (i_1\ i_2\ \cdots i_n)=(i_1\ i_n)(i_1\ i_{n-1})\cdots(i_1\ i_2), (i\ j)=(1\ j)(1\ i)(1\ j)である.

補題7 任意のn文字の置換は, n-1個の互換(1\ 2)(1\ 3)\cdots(1\ n)のいくつかの積で表される.

次に, \sigmaを互いに同じ文字を含まない巡回置換の積に表す.

\sigma=(a_{11} \cdots a_{1d1})(a_{21} \cdots a_{2d2})(a_{r1} \cdots a_{rdr}) d_1\geq d_2 \geq \cdots \geq d_r

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このとき(d_1, \cdots , d_r)を置換\sigmaの型という.

例8 4文字の置換の型は(4), (3,1), (2,2), (2,1,1), (1,1,1,1)の5つである.

定義9 部分群
次の条件を満たす群Gの部分集合Hを部分群という.

(1) 1 \in H
(2) a,b \in H \rightarrow ab \in H
(3) a \in H \rightarrow a^{-1} \in H

また, 記号H \leq Gと表す.

例10
G自身, それと単位元のみからなる集合\{1\}は常にGの部分群であり自明な部分群と言われる.

例11
行列式が1である実係数n次行列全体のなす集合をSL_n(\mathbb R)で表すと, SL_n(\mathbb R)GL_n(\mathbb R)の部分群である.

次の記号を導入する. 群Gの部分集合S, Tに対し

ST=\{st\ |\  s \in S, t \in T\}, S^{-1}=\{s^{-1}\ |\ s \in S\}.

Sが一つの元からなるときは, \{s\}T=sT, T\{s\}=Tsと表す. 加法群の場合は次のように定めることにする.

S+T=\{s+t\ |\ s \in S, t \in T\}, -S=\{-s\ |\ s \in S\}, \{s\}+T=s+T, T+\{s\}=T+s.

そしてこの定義から次を得る.

補題12
Gを群とし, R,S,TGの部分集合とする. このとき, 次が成り立つ.

(1) R(ST)=(RS)T
(2) (RS)^{-1}=S^{-1}R^{-1}

補題13
HGの部分群とし, h \in Hとする. このとき, 次が成立する.

hH=Hh=H=H^{-1}.

補題14
HGの空でない部分集合とするとき, 次が成立する.

H\leq G \leftrightarrow HH\subset H, H^{-1}\subset H \leftrightarrow HH=H, H^{-1}=H.

補題15 H, Kを群Gの部分群とするとき, 次が成立する.

HK=KH \leftrightarrow HK\leq G.

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