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さて, 今回はn次対称群についてやってみよう.

まず, n文字の置換とn次対称群の定義から.

I={1,2,\cdots,n}上の対称群(S(I);\circ)S_nと表し, I上のn次対称群という. n文字の置換とはS_nの元のことである.

演算 \sigma\circ\tau\sigma\tauで表す. また, 単位元は1で表す.

n文字の置換\sigma1,2,\cdots,nの行き先が定まればよい. そこで\sigma

    \[ \sigma= \left( \begin{array}{cccc} 1 & 2 & \cdots & n\\ \sigma(1) & \sigma(2) & \cdots & \sigma(n)\\ \end{array} \right) \]

とおく. 上の行の並べ方はどんな並べ方でもよい. たとえば

    \[ \sigma= \left( \begin{array}{cccc} i_1 & i_2 & \cdots & i_n\\ \sigma(i_1) & \sigma(i_2) & \cdots & \sigma(i_n) \\ \end{array} \right) \]

とおいてもよい. \sigma(i)=iとなるときその部分は省略して書くこともある.

例1
\sigma= \left( \begin{array}{cccccc} 1 & 2 & 3 & 4 & 5 & 6 \\ 2 & 4 & 3 & 5 & 1 & 6 \\ \end{array} \right)

\sigma= \left( \begin{array}{cccc} 1 & 2 & 4 & 5 \\ 2 & 4 & 5 & 1 \\ \end{array} \right)
となる.

定義2 群の位数の定義について
群Gに含まれる元の個数を, 群Gの位数という.

補題3 対称群S_nの位数はn!である.

証明) n文字の置換は, 1~nを並べ替えたものである. 並べ方は全部で{}_n \mathrm{P} _n通りある.

よって, {}_n \mathrm{P} _n=n!であるので, 対称群S_nの位数はn!である. (Q.E.D)

例4 2つの置換
\sigma= \left( \begin{array}{cccc} 1 & 2 & \cdots & n\\ i_1 & i_2 & \cdots & i_n\\ \end{array} \right) ,\  \tau= \left( \begin{array}{cccc} 1 & 2 & \cdots & n\\ j_1 & j_2 & \cdots & j_n\\ \end{array} \right)

に対して,

    \[ \sigma= \left( \begin{array}{cccc} j_1 & j_2 & \cdots & j_n\\ k_1 & k_2 & \cdots & k_n\\ \end{array} \right) \]

と置き換えると

    \[ \sigma\tau= \left( \begin{array}{cccc} 1 & 2 & \cdots & n\\ k_1 & k_2 & \cdots & k_n\\ \end{array} \right) .\]

注意1 \sigma\tauはまず\tauを施してから\sigmaを施すという順番である.(置換の積の順序については前から, 後ろからの2通りあるが通常は後ろから計算する)

では、実際にやってみよう.

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まず\tauによって, 1はj_1に, 2はj_2に, そして最後にnj_nに行く.つまり,
1\rightarrow j_1,
2\rightarrow j_2,
\vdots
n\rightarrow j_nとなる.

そして, \sigmaによってj_1k_1に, j_2k_2に, j_nk_nに行く. つまり,
j_1\rightarrow k_1,
j_2\rightarrow k_2,
\vdots
j_n\rightarrow k_n となる.

以上より, \sigma\tauによって
1\rightarrow k_1,
2\rightarrow k_2,
\vdots
n\rightarrow k_n となるのでこれを置換に置き換えると例4のようになる. また,

1= \left( \begin{array}{cccc} 1 & 2 & \cdots & n\\ 1 & 2 & \cdots & n\\ \end{array} \right) , \sigma^{-1}= \left( \begin{array}{cccc} i_1 & i_2 & \cdots & i_n\\ 1 & 2 & \cdots & n \\ \end{array} \right) となる.

例5 \left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 & 3\\ 3 & 1 & 2\\ \end{array} \right) \left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 & 3\\ 1 & 3 & 2\\ \end{array} \right) = \left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 & 3\\ 3 & 2 & 1\\ \end{array} \right),

\left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 & 3\\ 1 & 3 & 2\\ \end{array} \right) \left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 & 3\\ 3 & 1 & 2\\ \end{array} \right) = \left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 & 3\\ 2 & 1 & 3\\ \end{array} \right)
となる.

よって,
\left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 & 3\\ 3 & 1 & 2\\ \end{array} \right) \left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 & 3\\ 1 & 3 & 2\\ \end{array} \right) \neq \left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 & 3\\ 1 & 3 & 2\\ \end{array} \right) \left( \begin{array}{ccc} 1 & 2 & 3\\ 3 & 1 & 2\\ \end{array} \right).

なので、S_nにおいては交換法則が成り立たないということがわかる.

例6
\sigma, \tauを先ほどと同じものとする. このとき
\tau^{\sigma}=\sigma\tau\sigma^{-1} =\left( \begin{array}{cccc} i_1 & i_2 & \cdots & i_n\\ k_1 & k_2 & \cdots & k_n\\ \end{array} \right).
例7
n\leq mのとき, n文字の置換はm文字の置換とみなせます.つまり,

\sigma= \left( \begin{array}{cccc} 1 & 2 & \cdots & n\\ i_1 & i_2 & \cdots & i_n\\ \end{array} \right) = \left( \begin{array}{ccccccc} 1 & 2 & \cdots & n & n+1 & \cdots & m\\ i_1 & i_2 & \cdots & i_n & n+1 & \cdots & m\\ \end{array} \right) .

参考文献
[1]代数学の基礎 佐々木隆二

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